• 歯髄温存療法の実際 

    前回説明させていただいた歯髄温存療法ですが、実際代官山デンタルサロンで行っている症例をご紹介いたします。

     

    症例1

    銀歯の下が虫歯になり冷たいものが時々しみるという主訴で来院されました。

    レントゲンでみると赤い矢印の部分が黒く透けており、虫歯であることがわかります。そして神経の近くまで虫歯が存在している様子が見て取れます。

    歯の神経の診査を慎重に行い、神経を部分的に保存することができると判断し、歯髄温存療法を行いました。左の写真の赤い矢印部分は虫歯を除去した後に歯の神経が露出した状態のマイクロスコープ画像です。

    このケースは歯の神経にも細菌感染が一部見られたため感染している神経を除去し封鎖をしました(中央写真)。

    また、その後の感染予防も歯髄温存療法を成功させる非常に重要な処置となるため、歯の表面処理をしっかり行った上で歯質接着性のある樹脂材料にて封鎖を行います(右画像)。

    歯髄温存療法後のレントゲン写真です。赤い矢印の部分に白くみえているものが部分的に除去した歯の神経部に入れた薬です。現在2年近く経過し、問題もなく歯の神経も保存できています。

     

    症例2

    奥歯が痛いということで来院され、歯の神経の診査を行ったところ生活歯髄温存療法の適応であったため神経の保存治療を行いました。

    赤い矢印の部分の黒く透けている部分が歯の神経で、近くに見える白いものは昔に詰めた樹脂材料であるが、樹脂材料の位置から見て非常に神経に近い位置まで虫歯をとって詰め物をしてあるのがわかります。

    古い樹脂材料と虫歯を除去していくと歯の神経が露出しマイクロスコープ下で確認を行いながら感染がある神経のみ除去を行い、除去した部分に薬を詰めて細菌感染しないように封鎖しました。

    赤い矢印の部分に白く見えているのが神経を除去した後に詰めた薬です。この方も現在6ヶ月経過していますが経過良好です。

     

    生活歯髄療法を行った後は治療が成功しているか判断しなくてはなりません。そのために一定期間をおいてから歯の神経の反応を見る検査を行います。

    このように、生活歯髄温存療法は歯の神経における診査、診断が非常に重要であると言えます。

    歯の神経に細菌感染が起こっていたとしても歯の神経を残すことが可能である場合も多いためこういう治療が存在するということを知っておくだけで治療の選択肢が広がりますし、大切な歯を長く残すためには歯の重要な組織の一つである神経を温存することも大切な要素であると言えます。

  • 歯内療法における歯髄温存療法について

    歯内療法の3つのカテゴリーの1つ目である歯髄温存療法についてご説明いたします。

    まず、歯髄温存療法と一言で表されますが様々な状態の歯の神経に対して行われ、虫歯がどこまで波及し、歯の神経に炎症が及んでいるかという段階ごとに分類されています。

    1: Stepwise excavation(暫間的間接覆髄法)

    虫歯に感染した歯質を全て除去すると歯の神経が露出してしまうため数回かけて虫歯を除去し歯の神経の露出を避け、神経を保存する治療法

    2: Indirect Pulp Capping(間接覆髄法)

    虫歯がかなり進行しているが神経の露出がない場合、神経に近い深さまで虫歯を除去後、封鎖し神経を保存する治療法

    3: Direct Pulp Capping(直接覆髄法)

    虫歯がかなり進行し虫歯を除去したら神経が露出した場合に神経は除去せずに封鎖する治療法

    4: Partial Pulpotomy (部分断髄法)

    虫歯がかなり進行し歯の神経の一部に細菌感染が疑われる場合に感染している一部の神経を除去し細菌感染していない神経を保存する治療法

    5: Full Pulpotomy (断髄法)

    歯の神経の歯冠部(上部の大部分)全ての神経に細菌感染が疑われる場合に歯冠部の歯の神経を除去し歯根部の神経は保存する治療法

    虫歯が深く進行した場合、歯の神経を全て除去するのか、それとも歯髄温存療法で残せる神経は残すのか、もし歯髄温存療法を行うのであればどのような方法が可能なのかという判断は非常に難しく、科学的、生物学的根拠に基づいた治療法を選択し、それを技術的に行うことができる歯内療法専門医による治療が必要であると考えます。

     

     

  • 歯内療法という言葉をご存知ですか

    前回、根管治療とは?ということで歯の根の治療に関して大まかな目的と治療についてご説明致しました。

    今度は、歯内療法についてです。こちらの言葉も聞きなれない言葉ではないでしょうか。

    歯内療法とは大きく分けて3つに大別されます。

    1:歯髄温存療法(神経を残す治療)

    2:根管治療 (歯の根の神経の治療)

    3:外科的歯内療法(根管治療では治癒しなかった場合の外科的な治療)

    前回お話しした根管治療は、歯内療法という歯の神経や根の先の病気に対して行われる治療の中の一部の治療であります。

    例えば、1:歯髄温存療法についてですが、これは保存することが可能な歯の神経を極力温存し細菌に感染している歯質と場合によっては歯の神経を除去し密封するという治療です。このように神経を残すような治療も歯内療法の重要な治療の一部です。

    また、3:外科的歯内療法についてですが、こちらも抜歯せずに根の先の病気が存在している部分のみを除去することで治癒をはかり歯を保存する治療です。

    このように、歯内療法は主に歯の病気に対して保存的に行われる治療であり、歯を健康に残すための治療であると言えます。

  • 根管治療(根っこの治療)とは

    みなさん、根管治療という治療をご存知でしょうか。

    代官山デンタルサロンは歯の根の治療にも力を入れており、私は歯内療法専門医として歯の根の治療を専門的に行っています。

    しかし、実際に歯内療法や根管治療などといった言葉はあまり認知されておらず、残念ながらその重要性もなかなか広まっていないのが日本の現状であると言えます。

    少しでも皆様にわかりやすく歯内療法について、そして歯を保存することの重要性についてお伝え出来れば良いと思い、これからブログで少しずつ説明させていただきたいと思います。

    まず、最初に根管治療という言葉ですが、一体何をする治療のことであるかご存知でしょうか。

    根管治療とはいわゆる歯の根っこの治療、もしくは歯の神経の治療の事です。

    虫歯が進行すると、通常は象牙質という組織に守られている歯の神経に細菌が到達し感染を起こします。