放っておけないお口の乾き
前回、前々回で唾液の大切な役割についてお話しさせていただきました。
お口の健康を保つには唾液がたくさん出て、お口の隅々まで行き渡ることが大切です。
ところが、唾液が出にくく、お口の乾きを訴えて歯医者さんに相談に来られる高齢の患者さまが少なくありません。
先日もなんだかお口の中がヒリヒリするような気がする・・・と、お口の中の灼熱感を訴えて来院された方がいらっしゃいました。
お口の中を拝見させていただくと、歯ぐきはやや赤くなっていて、乾燥している感じでした。また、歯と歯ぐきの境に虫歯がたくさんできていました。
高齢の方で、歯と歯ぐきの境目に虫歯がある場合、多くが唾液の分泌障害と関係している可能性が高いので、さっそく唾液の出具合について患者様に確認したところ・・・
何となくお口の中が乾いているような感じはしていたものの、唾液の出についてはあまり気に留めてなかったようです。
唾液の出を悪くする原因として、お薬の副作用があげられます。特に高齢の方は、たくさんの種類の薬を一日に何回も飲む方が多いので、唾液を出しにくくする作用が無い薬であっても、多種類を併用することで唾液の量が減る可能性があります。
案の定、その患者様は多種類のお薬を飲まれていて、最近また薬の種類が増えたとのことでした。
実は50歳から55歳を対象に薬の唾液への影響を調べたデータによると、多くの薬で唾液の分泌量は減少し、また、1日に飲む薬の数が多い人ほどお口の乾燥症を起こしやすく、7種類以上の薬を飲んでいるいる人では65パーセントの人が乾燥症となっているという研究データもあります。
このような薬の副作用で唾液が出にくくなっている場合、だからといってお薬をストップすることは出来ませんので、内科の先生に相談して副作用の出にくいお薬に変えてもらったり、量を見直してもらったりします。
また、唾液をたくさん出すように食事時に水分をしっかりとり、よく噛んで食べることで、唾液の出を促進します。
そして、唾液を作る唾液腺のある顎の下や耳の下のマッサージを行うことで唾液腺を刺激して、唾液の出を良くします。
それでも唾液が出にくくてお口の中が荒れてしまう場合は、人工の唾液や洗口剤、保湿剤などをつかってお口に潤いを与えます。
65歳以上の56.1パーセントの方が、お口の乾きを自覚しており、唾液が少ないと噛んだり飲み込んだりが辛くなるために、味覚が鈍ってきていると感じているといいます。
また、お口の乾きは口臭の原因になるばかりか、のどや粘膜の病気、虫歯の危険度も高くなりますので、なんだか唾液がでにくくなったな・・・と感じたら、大したことないや・・・と放っておかずに歯医者さんに相談して下さいね。